「で、結局君の気持ちを聞いてないんだけど」
「あ?」
「あ? じゃないわ」
結論から言えば、死にそうになるほど美味だったよ。
うん、そう。死にそうになるほど、ってことは、死んではいないというわけで。
吸血痕に貼った絆創膏をなぞる。びく、と身体を震わせたロナルド君は、ゆるりと視線を泳がせた。
「……、べつに、いいだろうが」
「よくないだろ! 私はいつまで片想いしてりゃいいのだね。ドラちゃんがかわいそうだとは思わんのか?」
「う……、」
俯いたロナルド君から手を離す。
そりゃあ、ね。同じ気持ちが欲しいとも。だけど、彼はそれが望まれるならと、本心でなくても口にしてしまうのだろう。
ならば。
「……、いいんだよ。無理なら無理と言っておくれ。それで出て行ったりはしない」
「ッ、あ」
「ほら、まあ。……暫くはちょっとこう、ぎこちなくはしてしまうかもだけれど」
「ち、がう! 違う、ドラ公、俺は」
ぎゅう、と手を握られる。嵌め直した手袋のなかで砂になるほどの強さだ。ロナルドくんだって、それがわからないわけではないのだろう。息を呑んだ彼が、す、と力を抜く。どうしてだろうね、それが淋しくなってしまうのは。
「あの……か、確認なんだけど」
「うん?」
「その、さ、……ドラ公の言う、すき、ってさ。……ちゅー、とか……えっちなこと、したい、っていう……意味?」
「え、うん」
あ。
なんか普通に答えちゃったけど、これ、ダメなやつだった!?
でもでも、ここで『ヤベッ』みたいな顔をするほうがもっとまずいかもしれん。慌てたことがバレないよう、慎重に彼の顔を窺う、と。
わあ、真っ赤。
健康的な肌色が、さらに赤く染まっている。銀のまつげにふちどられた瞳は、うるうると涙を溜めた。え、なに、泣いちゃう?
「ろ、ナルドく」
「おまえ……、おまえがすき、なのはさ、うなじがきれいな美少女、だろ」
それは俺じゃない、と言って、ついにぽろりと涙がこぼれる。
ぬぐってやりたい。
けれど、私の手は彼に拘束されたまま。
「それでも、……そうじゃない相手でも、そういう意味ですきになる、のか」
「――なる、よ。なる。私は君が好きだ」
「うん……、」
あのな、と、今日何度目かの言葉のあと。
「俺、わかんなかったんだ。でも、お前が、そういう感じで言うときは、嘘じゃねえ、もんな。……信じて、いいんだよな」
「うん、……うん、そうだよ」
「……、まあべつに、嘘でもいいけど」
「いいわけないだろ!?」
「いいよ。だって、俺のうれしかった気持ちは嘘にはならないから」
涙を滲ませたままの、彼が浮かべる表情は微笑みだった。
ともすれば、諦念に簡単に変わるだろうもの。
「俺、もさ。お前のこと、すき、なんだと思う。お前に言われて気付いたから、あんまり……まだ、実感とかねえけどさ」
これでいいか、と問われて。
たぶん……たぶん、良いか悪いかで言えば、悪いだろう。だって彼、信じるって口にしたくせ、信じてなんかこれっぽっちもないんだぞ。
でも。
でも、いいってことにしないと、スタートラインにさえ立てない。
「うん。……うん! じゃあ、私たちは恋人だ。これから、改めてよろしくね?」
「え、あ。そっか」
「そっかて。あのねえ」
まあまあ、仕方ない。このゴリラはそういうものだ。
とびきり幸せにしてやるから、せいぜい覚悟するんだな!
コメント
話し合えー!!!とギリギリしながらもスレ違い美味なり!!!と情緒を乱高下させながら読ませていただきました。ご馳走様でした。
ロナルド君とウスパパのからみ大好きです。
お粗末様でしたぁ~!!
ドロのロくんとウスパパからしか得られない栄養素がある……!!
コメントありがとうございました!
死ぬほど大好きなドロ+ウスでしたありがとうございます。
ロナ君がウスパパと仲良くてなんだかんだ大事にされてるの見るとニコニコしちゃいます。
自己肯定感底辺ルド君、ドちゃんと出会えて、愛に気づけて本当に良かった…幸せになってください……。
ありがとうございます!
ロくんとウスパパ、地味に書くの好きなのでもっと色々書きたいですね……!
ロくんが心から幸せを感じられるまでドちゃんには押せ押せで頑張ってほしいです。ドロ末長く幸せになれ〜!
コメントありがとうございます!!
じわじわっとしあわせで埋まっていくロくんが見たいですね……。