【モブ視点】同時視聴しようぜ!

「推しカプの話をします!」
『どうぞ』
 ありがとう。通話相手に礼を言って、あたしは話し始めた。
「前言ったじゃん。ロナ戦がめっちゃ面白いって話」
『ああ、攻めがいないって泣いてたやつ?』
「そう! ロナルド様はめちゃくちゃ受け、だけど作中にいい感じの攻めが居なくて。モブ攻め苦手だからどうしようもない萌えに転げ回ったやつ」
『はいはい。あれがどうしたの』
「攻めが『キた』の」
『ほう』
「二巻が出てね。『落日のドラルク』。このドラルクっていうのが吸血鬼なんだけど、なんと、なんとね!? ロナルド様とコンビ組むって!!」
『ははあ』
「コンビだよ。退治人と吸血鬼の! しかも退治人は絶世の美丈夫で、吸血鬼のほうもクソザコではあるけどちゃんと古き血の由緒正しいやつ!」
『待って、クソザコなの?』
「うん。で、ここからが本題なんですけど」
『前置き長え。説明してくんないし。なに?』
「この後そのドラルク、ヌーチューバーのドラドラちゃんなんだけど、配信にロナルド様を連れてくるらしいので同時視聴してください」
『オーケーあんたのボリューム下げんね』
「叫ばないからあああ!」
『もう叫んどる!』
 
【しょっくーん、ドラちゃんだぞ。今日はみんな大好きロナルド君ゲスト回だ】
【べつに大好きではないだろ……えっと、どうも?】
「キタッッッ……」
 ドラちゃんとロナルド様が並んで映る画面。
 吸血鬼もお尻に力を入れればこういうのに映る、ってロナ戦にあったとおりだな。……このおじさん、今お尻に力入れてんのかあ。草。
【おおっ、素早いスパチャありがとう! ほらロナルド君、読み上げたまえよ】
【へぇっ、俺!? あー、『ロナルド様待ってました! 一生推します』? いやいや、そこまでしなくていいから。自分のためにお金使ってくれ】
【君は本当に推しがいのない子だねえ】
【うるせえ殺すぞ】
「フフッ」
『殺害予告じゃん』
 あたしや通話相手と同じような反応がコメントに流れる。草、いつもの、ロナルド様のそういうところが好き。最後のめっちゃわかるわ〜。
 ちなみにロナルド様は本当にドラルクを殺した。砂が舞い散るけど、砂の状態ってお尻に力入れてるの? お尻、どこ?
【で、今日はなんのゲームすんだ。俺観戦がいいんだけど】
【ああ、今日はしないよ。いわゆる雑談枠だね】
【え!】
「言ってなかったんかい」
『ていうか聞かずに出るのもすごいわ』
 たしかに。ていうかロナルド様、驚くと目がおっきくてかわいい。
【君の醜態をネットに晒すのも面白いけどね、まあそんなもんいつでも観られるし】
「はいマウントきました〰︎〰︎〰︎ッ!」
『めちゃ嬉しそうにするじゃんよ』
 ちなみにドラルクはまた殺されている。今のところ晒されてるのは殺害現場だ。
【飲酒雑談はゴリラが潰れた時がめんどくさいので、我々は紅茶を嗜みます。視聴者諸君はお酒でもジュースでも好きなものを用意したまえ!】
【潰れねえ。俺は強い】
【嘘つけほろよいでガチ酔いゴリラ】
『そうなん?』
「そうなのロナルド様めちゃくちゃ酒に弱いの。マジで受け」
【ほーらロナルド君、おつまみのバナナ蒸しパンだ。早え!】
「ミ゛ッ」
 え? えっ、ロナルド様が、ドラルクの持つ蒸しパンに直接齧り付いたんですが!?
【ふまい】
【よかったねえ。餓死寸前だったのかしら】
「こちらはお腹いっぱいですぅ……」
『まだ配信開始一〇分も経ってないのになにを見せられてるんだ……?』

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